原因はこちこち(固定)能力観だった

 

先日、「らくだ通信」(らくだメソッド

開発者 平井雷太氏著)を

読んでいたところ、佐伯胖氏

(現在青山学院大学教授)の

「固定能力観」という言葉が

目に入ってきました。

それはまるで私自身について

書かれているかのようでした。

次にその一部を抜粋して

紹介します。(引用部:●太文字)

 

●頭がいいとか悪いとかいうことが

生まれつき決まっているという考えを

「固定能力観」、それはいくらでも

変わりうるという考えを「変動能力観」と

呼びます。

「変動能力観」を持っている子は、

能力とは一人の人間の中で

課題に応じて存在するものであり、

課題の克服を通して実感されて

いくものと考えます。

 

それに対して「固定能力観」を

持っている子は、能力とは

何にでも通用する「一般的能力」の

ことであり、それを持っている人と

持っていない人がいるという

意識があります。

 

 人を「できる子」「ダメな子」と

決めつけるのが固定能力観ならば

確かに私の中にもあります。

それは私自身の体験の影響が

かなり大きいと思います。

 

小学校に入学した頃は、空想がちで

ボーッとしていた私は、比較的

運動神経のよかった双子の兄とは違い、

草野球は三振エラーばかり、

さらに寝小便をする度に庭に高々と

布団を干されてたり、

日々屈辱感と劣等感を味わうことが多く、

それがとても嫌でたまりませんでした。

 

そんな私も高学年になると

成績が上がり、川崎から横浜に

転校してからはクラスで常に上位。

問題を見た瞬間に答えが浮かぶ

ようになり、

「教科書を読めばわかることを

なぜわざわざ授業なんかするの。

こんな簡単なことが他の子は

なぜわからないのだろう」などとも

思っていました。

 

 今までの劣等感の裏返しのせいか

今度は周囲を見下しはじめたのです。

また親が学期末に通知表の結果で

「5」は50円、「4」は30円などと

特別手当を支給したことも私の高慢さを

加速したかもしれません。

 

さらには小学校5年のときに親の勧めで、

進学教室の全県模擬試験を受け、

結果は4位。

そこで私は「自分は優秀な子なんだ」と

勘違いしてしまいました。

 

  ●自分から仮説を立てるのではなく、

自分の中にあるものがパッと

何かに使えた時は良くて、使えなかったら

モトがないんだという発想に

なる、これが固定能力観的な意識です。

 

 勉強しなくても答えが

浮かんでくるのですから、

「自分の中にあるものが

パッと使えた」体験なのでしょう。

そのまま地域の公立トップ高校にも

合格してしまうと「勉強しなくても

合格できる僕は頭がいいんだ」という

錯覚は揺るぎないものとなりました。

 

●「女性の場合、中学くらいになると

数学ができなくなることが多い。

それは数学が中等レベルになると、

それこそ本気で自分で仮説を

作らないと解けなくなることに

起因している」とキャロルという

女性心理学者が言っています。

 

数学が解けるかどうかはやって

みないとわからない。

事前に見当がつかない世界になってくる。

そうすると勉強することが

非常に不安になってくるわけです

 

 やがてそのツケが回ってきました。

高校2年の数学2Bになると

だんだん理解できなくなり、

物理、化学、英語と苦手科目が

増えてきました。

 

定期試験後に貼り出される

成績上位者の順位も急降下。

あわてて参考書を読んでも

目は字面を滑るばかりで

まったく頭に入りません。

 

パッと見て表面的に理解してきた私は

パッと見て理解できないと

どうしていいかわからず立ち往生。

「本気で自分で仮説を作る」ことなど

想像もつかず、不安の中でただ

ひたすら丸暗記でした。

 

優秀だったはずの私が

まったく内容を理解できていない。

そのことが友人にばれたらと

恐れながらも、なす術もないまま

落ちこぼれていきました。

 

●課題に対して、自分でうまく

対応できなかったらどうしよう。

そういう不安がものすごくある。

勉強をしないとか努力しないとか、

それは不安からの回避なんです。

 

 必死の丸暗記作戦でなんとか

大学も会社も入ってしまいますが、

自分が理解していないことがばれないかと、

いつもどこかでビクビクして、

できないことや知らないことには

近づかないようになっていました。

とにかく恥をかくことが

私にとって一番の恐怖だったのです。

 

●しかし自分の中の固定能力観が

あるからダメなんだ、ということには

どうしても気がつかない。

それがものを考える時の

大前提になってしまっている。

 

あなたは頭がいいとか悪いとか、

とにかく外部からの評価で

がんばれとかダメとか言われているうちに

固定能力観みたいなものが

いつのまにか、できあがってしまうのです。

 

 この固定能力観が私の人生に

大きな影響を与えたことも、

それを育てた要因も浮かび上がってきました。

ではどうすれば変動能力観に

切り替えられるのでしょうか?

佐伯氏はそのヒントについても語っています。

(続く)

*佐伯氏は固定能力観/変動能力観と

いう用語を使っていますが、

表現自体が固く感じられたので、

『「やればできる」(Mndset)」

(キャロル・ドゥエック著)に使われている、

こちこちマインドセット(Fixed Mindset))/

しなやかマインドセット(Growth Mindset)を参考に、

私自身は、こちこち能力観/しなやか能力観と

呼びたいと思っています。(中城)