大切なのは毎日、机の前に座ること

 毎日書くのだ。

書けるとき書き、書けないときに

休むというのではない。

書けない、と思うときにも、

机の前に座るのだ。

すると、ついさっきまで、

今日は一字も書けない、と

思っていた筈なのに、

ほんの少し、行く手が

見えるような気が

するから不思議である。

 

 書くことが大切なのではない。

机の前に座ることが

大切なのである。

机の前に座って、ペンを握り、

さア書く、と言う姿勢を

とることが大切なのである。

自分をだますことだ。

自分は書ける、と思うことだ。
(宇野千代 「私の文章修業』)